Apple Watch 4の心電図機能(ECG)が日本で使えない理由と使う方法は?
Apple Watch Series 4には、心電図を計測する機能が搭載されているが、日本国内ではその機能が使えない。Apple Watch自体は全世界共通で製造されているため、日本においても心電図を計測する方法があるかを確認してみる。
目次
- 1Apple Watch Series 4の心電図機能(ECG)が日本では使えない
- ・心電図機能(ECG)とは
- ・心電図機能(ECG)が日本では使えない理由
- 2Apple Watch Series 4の心電図機能(ECG)を日本で使う方法
- ・アメリカでApple Watch Series 4を手に入れる
- ・心電図機能(ECG)の使い方
- 3Apple Watch Series 4の心電図機能(ECG)のメリット
- ・簡単な診断が可能
- ・データとして保存できる
- 4Apple Watch Series 4の心電図機能(ECG)の注意点
- ・22歳以下は対象外となる
- ・病気を発見するものではない
- 5Apple Watch Series 4の心電図機能(ECG)で助かった例
- ・心電図機能(ECG)のおかげで早期発見できた
- ・アメリカでは医師も信頼あるデータとして利用できる
- 6Apple Watch Series 4の心電図機能(ECG)はすごい!
Apple Watch Series 4の心電図機能(ECG)が日本では使えない
日本での発売時に話題にされることがありませんでしたが、Apple Watch Series 4には、新機能として心電図(ECG=ElectroCardioGram)機能が搭載されています。ただ、残念なことに医療品としての扱いとなるため、認可されないと使えません。そのため、Apple Watch Series 4に機能は搭載されているものの、日本では使えないように設定されています。
心電図機能(ECG)とは
心電図とは、健康診断でよく見かける検査項目で、心臓の動き・調子を調べるものです。方法としては、心筋(心臓の筋肉)に流れる電流を記録します。電気が発生する回数から心拍数も調べられますし、電流の流れ具合から心臓の各部位に発生している異常も発見できます。
心電図は心臓の電気的な活動をグラフの形に表すもので、そのグラフの動きが心臓の様々な異常を示してくれます。本来の健康な心臓なら規則的なグラフになるべきところを、不規則な形となれば不整脈の疑いがありますし、本来なら描かなければならない正常なグラフの形と違えば、血液循環が不良である狭心症や心臓が壊死しかけている心筋梗塞の疑いがあるのがわかります。
以前であれば、心臓近辺と四肢に電極を取り付け、心臓が動く時に発生する電気信号を受信し、それをグラフにして表示していました。今でも正確に記録するためには医療機関で安静にして、コードを身体の各部に貼り付けて記録することになります。
しかし、近年はApple Watchに代表される様なウェアラブル端末に簡易な機能が登載される様になっています。Apple Watchにも初期から心拍計機能が搭載されていましたが、いよいよseries 4より心電図機能(ECG)が登載されたのです。
医療機関で使用する本格的な心電図(ECG)を計測する装置を使えば、心臓の4つの部位(右心房、左心房、右心室、左心室)のどこに異常があるかまで調べることができますが、流石にApple Watchにはそこまでの詳細な検査結果はわかりません。それでも、大まかな心臓の調子を調べることが可能なのです。
仕組みとしては、Apple Watchの文字盤の裏側、手首に接する部分の発光ダイオードを発光させ、それをセンサーで観測することにより血流を測る事ができます。また、同様に手首に密着する部分とDigital Crown(ベゼル部分)に電極がありますので、Digital Crownを反対側の指で触る事で、心電図を記録する事ができます。この二つの情報から心拍数と心電図(ECG) を調べる事が可能となっています。
心電図機能(ECG)が日本では使えない理由
Apple Watchは、医療機器としの認可を受けていません。そのため、医療行為に関わる機能を使えないのです。
なお、Apple Watchは全世界共通で作られているため、心電図(ECG)を測るためのセンサー類は日本のApple Watchにも登載されています。それらが使えないのは、偏にデータを統合するアプリが使えないからです。
意外に思えますが、センサーの機能自体が使えない様にされているのではなく、センサーから情報を集め纏めるアプリが機能せず、その結果として使えないだけです。そのため、Appleの公式サイトでは、日本語版のECGアプリのページが無い(存在しない)状態です。
逆に言えば、認可さえ下りればWatchOSをバージョンアップする事によって心電図機能(ECG)アプリが使える様にできるのです。
日本での医療機器認定が必須!
その認可ですが、日本では医療関連としての認可を受けることはとても難解な問題である様です。医療機器の認可の現状はわからないため、一般論での比較となりますが、化粧品や健康食品が厚生労働省の認可を受けるのには4,5年かかることもあります。わずか2ヶ月弱で食品医薬品局 (Food and Drug Administration=FDA)に認可されたアメリカとは大違いです。
そのため、心電図機能(ECG)が実装される予定は白紙のままです。
Apple Watch Series 4の心電図機能(ECG)を日本で使う方法
この様に便利な機能である心電図機能(ECG)を日本で使う方法を調べてみました。
アメリカでApple Watch Series 4を手に入れる
方法としては、簡単ではありませんが、あることはあります。そのために必要な条件は三つ必要です。
- アメリカでApple Watch Series 4を入手する。
- アメリカで初期設定を行う。
- 日本で使うiPhoneをアメリカまで持って行く。
iOS12.2とWatchOS5.2以前ならば、少なくともアメリカ製のApple Watchさえ入手すれば使えていた様ですし、そのための輸入代行業者もいました。それが、両OSがバージョンアップしてからは上記の様な三つの条件になってしまい、以前の方法が使えなくなってしまいました。
現在は、
- アメリカに行く。
- Apple Watchを購入する。
- 現地でiPhoneを初期化する。
- Apple Watchを初期化し、ペアリングする。
多分、日本製とアメリカ製のApple Watchはシリアル番号で違いを識別をしているものと思われます。また、認可されているアメリカ国内で使用している事を確認する方法として、初期化時の使用地域がアメリカとなっているかをiPhoneでチェックするからでしょう。
このチェックはiPhoneとApple Watchのペアリングの時だけしか見ていないので、ペアリング後に日本に持ち帰っても問題はありません。しかし、機種変更や修理に伴う機種交換をした場合、心電図機能(ECG)は使えない状態に戻ってしまいます。
その様な訳ですから、頻繁にアメリカと日本を行き来する人にとっては比較的簡単な方法かもしれませんが、海外に行く用事のない一般人にとってはなかなか超え難いハードルです。
心電図機能(ECG)の使い方
なお、Apple Watchで心電図を測る方法は極めて簡単で、アプリを起動し、画面の指示に従い、安静にしてApple Watchを嵌めたのと反対側の指でDigital Crownに触れるだけです。この状態で30秒ほどじっとしていれば、心電図が記録されます。
記録した心電図のデータは「ヘルスケア」アプリに集積されていきます。そのデータをPDF化して出力する事も可能です。
Apple Watch Series 4の心電図機能(ECG)のメリット
これまで医療機関で本格的に検査するか、もしくは小型とはいえ、持ち運びしづらい計測機器を持って心電図を記録しなければならなかったのが、通常腕に嵌めている腕時計だけで記録できる様になるのですから、その便利さは推して知るべしでしょう。
簡単な診断が可能
本式の検査機器に比べれば、四肢と心臓に電極を貼り付ける訳ではないですから、その精度には限界があります。また、心臓の4つの部位(右心房、左心房、右心室、左心室)それぞれをチェックできる訳でもないので、詳細なデータを取る事もできません。
しかし、心臓に不整脈の様な、何らかの不具合が生じていたり、その兆しがあるかどうか程度ならチェックすることが可能です。要は、日頃確認する方法のない心臓の状態を、いつでも調べられるのが目的で、詳しい検査は専門の医者や医療機関に任せるという使い方をすれば良いのです。
不整脈の察知には十分な性能
心臓疾患の中でもっともよく聞く不整脈。一言で不整脈と言っても、生命の危険に直結する心房細動から、ストレスや寝不足が原因のちょっとした不健康状態まであります。その判別についてはこれまである程度の時間をかけて心電図を取るしか方法はありませんでした。
常に不整脈状態ならすぐに検査で結果も出ますが、時々発生する不整脈は医療機関で再現されるとも限らず、診断はなかなか難しいものでした。
不整脈というのは心臓の鼓動が一定していない状態の事ですから、心電図の見方さえ把握すれば、Apple Watchでも不整脈が起きているかどうかを、素人レベルでも疑う事が可能なのです。
自身がおかしいと思えばすぐに記録を取り、医師に相談すれば良いのですし、何よりも心電図機能(ECG)に医療機器としての認可が下りれば、Apple Watchが集めたその記録自体を医師の判断材料として使う事もできます。
データとして保存できる
心電図(ECG)の記録にはDigital Crownに触れるだけなのですが、人の体ですから、触れ方や状態によって、常に同じ状態で記録を取れるとは限りません。しかし、数多くデータを集積していけば、データの差異などを排除して、より正確な記録を取得できます。この点、医療機関で短時間に繰り返し記録を取るよりも、さらに詳細なデータを集める事が出来ると言えるでしょう。
Apple Watch Series 4の心電図機能(ECG)の注意点
使いこなせば便利な心電図機能(ECG)を使うときの注意点を見てみます。
22歳以下は対象外となる
心臓の動きについては当然ながら年齢による差異があります。体脂肪を測定する機器が15歳未満を対象外としている様に、心電図機能(ECG)も同様に22歳以下を対象外としています。詳細な理由までは公表されておりませんが、若者の心臓とでは統計的に不正確になるからでしょう。
病気を発見するものではない
Apple Watchの心電図機能(ECG)により、心臓の不調もしくは兆しに気づく事ができる様になりました。その結果、心房細動などの不具合が発見される事例が報告されています。が、これはあくまでも病気の発見のきっかけであり、Apple Watchが病気を発見しているわけではありません。心電図機能を盲信するのではなく、その結果を参考にして医師と協力し、自身の問題点を見つける事が大切です。
Apple Watch Series 4の心電図機能(ECG)で助かった例
すでに認可されているアメリカでは、この心電図機能(ECG)により、心臓の異常に気づいて速やかに処置を受けた事例がいくつか報告されています。
心電図機能(ECG)のおかげで早期発見できた
テキサス州メディアのNBCDFWによると、テキサス州在住の女性(75歳)は、孫の所有するApple Watchを見て、自分もApple Watch Series 4を購入します。彼女は、カロリー消費と心拍数を計測していたところ、通常最大心拍数が140であるところが、180まで上昇していたという記録に気づきます。
数値に間違いがないかを確認するため、心臓の異常を感じるときにECGアプリを使用し、心電図波形を生成してiPhone経由で医師に転送しました。
本来なら、病院で精密検査を受けるかどうか、そこから判断しなくてはならないのですが、Apple Watchの記録だけで医師からは異常があると確認されました。
その後、病院で精密検査を受けた女性は、心房が不規則に痙攣し、脈が不規則になる不整脈の原因である心房細動と診断されました。早期発見であったため、血栓や脳卒中に繋がる可能性のある病気が未然に防がれたのです。
日本と違い、アメリカでは、仮に自身の心臓に不調を感じたとしても、医師の診断を受け、その後専門医を紹介してもらい、その後に検査の予約をし、それからモニターを取り付け、数日かけて検査を行うという流れを経ないと、診断をしてもらえません。
心臓の病気の怖いところは、初期症状もほとんどなく、自覚症状も些細な事から、いきなり発症する恐れがある事です。事前に見つかったり、発症後すぐに医者にかかれば被害が小さくて済むにも関わらず、その発見が難しいため、多くの命が失われています(アメリカでは死因の5%が心臓発作と言われています)。
今回の場合、女性は不整脈の発見をキッカケに、その不整脈の原因となっている心臓の局所の問題を発見しました。その後所要時間わずか2時間の高周波電流で患部を焼くアプレーション手術を行うことにより、わずか1週間の入院で日常生活に戻れたそうです。
他にも、2018年末には医師が胸焼けと診断していた男性の心房細動を検出したり、再発に気づくきっかけになったりと、いくつものニュースが報じられています。
アメリカでは医師も信頼あるデータとして利用できる
日本とアメリカでは、健康保険の制度に大きな違いがあります。日本では比較的安価に誰でも健康保険に加入できますが、一方のアメリカの保険料は高く、種類も様々で一律になんでも補償してくれるわけではありません。心電図(ECG)検査についても、手順をきちんと踏まないと保険金が支払われないなどの制限もある様で、どうしても慎重にならざるをえません。
Apple Watchの心電図機能(ECG)は、自身で心臓の不調をチェックする事が可能になると同時に、公的機関(アメリカではFDA)の認証を受けているため、医師からも信頼すべきデータと扱われます。そのため、本来なら時間のかかる検査の過程を省く事も可能となっているのです。
アメリカの死亡原因の5%が心臓発作との統計もある事から、アメリカにおいては心電図機能(ECG)をもつApple Watchの機能は自衛のためにも必要な機能だと言えるでしょう。自分の身は自分で守るという辺りが、アメリカらしい考え方です。
Apple Watch Series 4の心電図機能(ECG)はすごい!
これまで、簡単に調べることのできなかった心電図(ECG)を気軽に記録し、自身の健康管理に使える様になったというのは、画期的な事です。
以前であれば、心拍数も計測が面倒だった様ですが、今ではウェアラブル端末に必須とも言える機能となっています。その結果、心拍数は、今では科学的トレーニングに必須のデータとなった様に、心電図機能(ECG)もいずれは必須の機能となるでしょう。
それを先取りしたアップル社は先見の明があると言えますし、搭載していきなりアメリカでは医療機器として認証されているのですから、その必要性がよくわかります。
人間は年齢とともに身体の各部に不具合が生じますが、心臓はその中でももっとも重要でありながら、調べ難い部位でした。いち早く簡単に調べられる機能を実装したApple Watch Series 4の革命的な進化が判ると思います。