iPhoneは防水だから雨に濡れてもお風呂で使っても平気というのが一般常識ですが、これは間違いです。iPhoneは防水ではなく、あくまでも耐水仕様ですし、永続保証もありません。これくらいなら大丈夫と思っていると、保証の対象外になり、思わぬ金額を請求されます。
2016年に発売されたiPhone 7以来、iPhoneは防水仕様になり多少の水濡れに耐えられるようになりました。現行モデルのiPhone 8/XS/XRにも、この防水仕様が受け継がれています。しかし一般に思われているよりもiPhoneの防水仕様ははるかに簡易的なもので、完全防水からはほど遠いのが実情です。
iPhone XSではiPhone 8やiPhone XRよりも一歩防水に近づいたものの、一般に想像される海やプールにいれても大丈夫、というようなレベルの防水レベルにはまったく届いていません。「防水」というより「耐水」と言うべきiPhoneの防水仕様についてお話しする前に、まずは一般的な防水規格について解説します。
国際電気標準会議(IEC)や日本工業規格(JIS)では、電気機器の内部へ侵入する異物への保護性能に対してIPコードという規格を定めています。「IP●▲」という表記のこのコードは、「●」の部分で防じんの、「▲」の部分で防水の、それぞれ保護等級を表します。
この防水の保護等級については以下のように定められています。
IPコードでは、8が「防水」で、7は「耐水」止まりです。耐水レベルの7では、一時的な水没には耐えられても、長時間の継続した水没には耐えられないということを意味します。一方、IPコードによく似た規格に時計に付けられる「WATER RESISTANT」という、「W.R.」とも略されるJIS、ISO準拠の規格があります。
こちらの「日常生活用防水時計」は2〜3気圧の防水で、これは日常生活における汗や洗顔、雨などに耐えられますが、潜水には使用できないレベルです。その上には5気圧、10気圧、20気圧の各防水レベルがあり、これらをまとめて「日常生活用強化防水時計」と呼び、10気圧以上からは水上スポーツやスキンダイビングにも使える「完全防水」になります。
つまり、時計の防水レベルからすれば、IPコードのレベルでは7も8も日常生活用防水レベルに及ばない「耐水」レベルでしかなく、「完全防水」からはほど遠いことがわかります。とはいえ、日常生活におけるiPhone 8意向の機種は、ポケットに入れておいての発汗の影響や洗面所の脇に置いておいての洗顔、通勤・通学時の降雨などには十分耐えられます。
しかし、これは一般的な「防水」のイメージからはほど遠いことも事実です。
こうして説明すると、それでは現行モデルのiPhone 8/XS/XRの防水性能はどのレベルに当たるのか、と気になることでしょう。それについては、以下で説明します。
Appleの公式サイトでは、iPhone XSについて「次のレベルの耐水性能と防塵性能」と記しています。決して「防水性能」とは記していないことに注意してください。さらにその部分についての注には、以下のように記されています。
iPhone XSとiPhone XS Maxは防沫性能、耐水性能、防塵性能を備えており、実験室の管理された条件下でのテストにより、IEC規格60529にもとづくIP68等級に適合しています(最大水深2メートルで最大30分間)。防沫性能、耐水性能、防塵性能は永続的に維持されるものではなく、通常の使用によって耐性が低下する可能性があります。iPhoneが濡れている場合は充電しないでください。クリーニングと乾燥の方法についてはユーザガイドをご覧ください。液体による損傷は保証の対象になりません。
保証されているのは、わずか水深2mで最大30分の水没だけです。しかも永続的な耐水性も保証されていません。残念ながらこれをもって「完全防水」とは言うことはできません。
あらためてiPhoneのIPコードを確認すると、iPhone 8(以下iPhone 8 Plusも含む)とiPhone X/XRがIP67、iPhone XS(以下iPhone XS Maxも含む)がIP68となっています。IPX8はIPコードで最大級の防水レベルですが、前者は最大水深1mで最大30分間、後者は最大水深2mで最大3分間の水没に対しての保証でしかありません。
生活用完全防水の時計なら2〜3気圧の防水ですから、水深にして10〜20mに当たります。それに比べれば耐水仕様の水深1〜2mというのが、いかに浅いかがおわかりいただけるはずです。それを思えば、iPhoneをして「完全防水」と呼ぶべきではないことが理解できるでしょう。
そもそも水深1〜2mということは、iPhone 8/X/XRならばバスタブ、iPhone XSなら足がつくか否かという程度のプールに、それぞれ落としてしまい、しばらくしてから気がついてすくい上げた、という程度でしか保証できないということです。確かにこれでは「完全防水」からはほど遠い耐水性能でしかないことがわかります。
iPhoneが水没し、本体内に水が浸入するとiPhoneの故障の原因となります。また、表面上は浸水による症状がでていなくても、たとえばバッテリー交換をするつもりで修理に出したり、画面が割れてそれを交換したりする際に、iPhoneが水没したと見なされると本体修理の扱いになります。
2019年4月現在では、1年以内のバッテリー交換なら無料、それ以上であっても5,400〜7,800円、画面交換であれば16,800〜37,400円で済むところが、水没判定を受けると39,800〜67,800円が必要となります。画面交換を覚悟していても倍の、バッテリー交換のつもりでいたのなら8倍ほどの金額が請求されるのです。
この際、iPhoneが水没したかどうかの判定は、iPhoneの「液体侵入インジケータ(LCI)」によって行われます。たとえばiPhone X/XS/XRではSIMトレイを外した以下のLCI部分が赤くなっていると、iPhoneが水没したと判断されます。
同様にiPhone 8でも、SIMトレイを外した以下のLCI部分が赤くなっていると、iPhoneが水没したと判断されます。
SIMトレイには防水性のあるゴムパッキンがついており、これによりiPhone内部への浸水を防いでいます。しかしゴムパッキンは経年劣化するものですから、何年も利用したiPhoneの耐水性能は、その分劣化すると思っておくべきです。
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