クロネコヤマトで知られるヤマト運輸が、Amazonの当日配送から撤退しました。大量の荷物を扱う顧客であるAmazonに対し、なぜヤマト運輸は当日配送から撤退したのか、撤退によってAmazonにどんな影響があったのか、クロネコ撤退後の状況も含めて解説します。
クロネコヤマトで知られるヤマト運輸が、ネット販売で大量の配送を発注しているAmazonの、当日配送から撤退しました。撤退に至った経緯について調べました。
Amazonのネット販売では、販売された品物の多くは倉庫から宅急便で配送しています。この配送している量は増加を続けており、物流業界の人手不足も重なって、大きな負担となっていました。そのためヤマト運輸では配送料の値上げをAmazonに要求していた経緯があります。
そんな中で特に負担の大きいのは、注文から配送までをその日のうちに行う「当日配送」でした。非常に限られた時間内での対応となるため、配達員が日のうちに何度も荷物のピックアップに向かう必要があるなど、現場での手間が増加していました。通常の荷物の増加とも相まって、ヤマト運輸は当日配送からの撤退を決定します。
同時期に行われた値上げについても同様です。その背後には、急増する荷物に対応しきれず、ドライバーが疲弊し、ついには労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受ける事態になったことがあげられます。ヤマト運輸が働き方改革を進めるために、値上げと当日配送撤退により、荷物の量を減らすのは急務だったのです。
新たな委託先として、Amazonは埼玉県に本社を構える「丸和運輸機関」を指名しています。この会社は東証一部上場企業で全国に100カ所を超える支店、営業所を持つ企業です。一般の宅配配送以外にも、「桃太郎便」ブランドの輸送サービスや、オンデマンド事業、バスの運行事業などをしています。
その後、地域に密着したいくつもの配送業者を「デリバリープロバイダ」として提携し、それぞれの地域毎に別の配送業者に委託する体制が作られました。これによって、ヤマト運輸の値上げに伴う、物流コストの増加を抑えようとしています。
Amazonでは、ヤマト運輸の撤退後について、新たな委託先だけではなく、新たな自社配送システムの構築も進めています。
ヤマト運輸は宅急便としては佐川急便に並ぶ最大手です。クロネコヤマトと言えば、ほとんどの人に通じるほどに日常的に配達車が走っているように、扱う荷物の量も膨大です。これを当日配送のみとは言え切り替えるためには、新たな委託先だけではなく、効率的に配送するための仕組みが必要です。
Amazonでは、その商品をAmazonの自社倉庫に入れ、Amazonの倉庫からクロネコヤマトなどの宅急便を使って配送しています。この商品の一部を、自社の倉庫に一度納めるのではなく、提携先の店舗から直接、購入者に届ける仕組みを加えました。
提携先の店舗からの配達には、提携先の物流会社が持つ専用車を利用することで、効率的な配送が出来ます。この直接配送を使うことによって、店舗から倉庫までの移動時間、コストを削減すると共に、注文から短時間で配送する体制を作り上げました。その結果、賞味期限の短い食品なども扱えるようになります。
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