人気のビジネスチャットツール、Slackは無料プランでも数人のチームなら対応できます。しかしそれ以上の人数で利用しようとしたり、Slackならではの便利さを求めたりするのなら、有料版に移行するしかありません。本記事では有料版のメリットと移行方法をお教えします。
メールソフトではスパムや多くのメールに埋もれてしまい、電話も仕事の進行を妨げるというなかで、対象を絞って情報をやり取りでき、電話ほど今やっている仕事の邪魔にならない、準リアルタイムのコミュニケーションツールとして、ビジネスチャットツールが話題になっています。
その中でも機能性の高さから人気を呼んでいるのが、アメリカのIT業界生まれのSlackです。もともとはゲーム開発時の社内ツールとして開発されたという、まるで潰れかけた旅館を立て直した若旦那制作の顧客管理ツールが外販される鶴巻温泉の陣屋のようなエピソードを持ったビジネスチャットツールでもあります。
Slackはその出自から、ゲームユーザーによく使われていたチャットツール、IRCの操作性を受け継ぎ、かつIT業界のユーザーのニーズに応え、機能性を高めて発展してきました。現在ではIT業界の枠組みを超えて、広く利用されていますが、やはり今でも機能性の高さが一番の特徴となっています。
Slack For Teamsを契約すると、ワークスペースと呼ばれるチャットルームの集まりがひとつ提供され、そのなかに複数のチャンネルと呼ばれる話題別に分けられたチャットルームで、コミュニケーションと呼ばれる会話や画像・PDFなどのファイルを交換したり、ワークスペース内のほかのユーザーにダイレクトメッセージを送ったりできます。
各種のアプリやサービスと連携したり、自前のbotを作成して必要な情報を発言するようにしたり、人により、また導入した企業により、自由度の高い運用ができるのが最大の魅力です。
反面、そこまでの機能が不要だったり、それらの機能をうまく運用できる担当者がいなかったりした場合には宝の持ち腐れになる可能性もあり、目的に合わせてほかのビジネスチャットツールとの比較を行う必要があります。
Slackには大規模な複数のワークスペースを持つ「Slack Enterprise Grid」とワークスペースがひとつだけで、中小企業や企業内の一部署など中小規模のチーム向けの「Slack For Teams」のふたつがあります。
「Slack Enterprise Grid」の料金は要相談でSlackに問い合わせる必要がありますが、「Slack For Teams」の料金プランはシンプルで、以下の3つに分かれています。
料金プラン | 月額・ 年払い |
月額・ 月払い |
特徴 |
フリー | 無料 | 無料 | Slackの試用や小規模チームによる利用向き |
スタンダード | 850円 | 940円 | Slackの一般的な利用向き 10人以上ならフリーよりスタンダード |
プラス | 1,600円 | 1,800円 | SSO(シングルサインオン)が可能になる 信頼性が増す |
Slackの無料のフリープランを試用版として利用するのであれば、十分にSlackの利便性は確かめられます。しかし長く使うのであれば、個人のサークルなどで利用するならばともかく、企業で利用するのなら、メッセージ検索件数と連携アプリの個数のふたつの上限のせいで、早晩無料のフリープランからメリットの大きい有料版の利用に踏み切ることになります。
先に挙げた表を見ればわかる通り、スタンダードプランとプラスプランのそれぞれについて年払いと月払いで月額が異なります。
スタンダード……年払い月額850円、月払い月額940円
プラス……………年払い月額1,600円、月払い月額1,800円
スタンダードプランで月額90円、プラスプランで月額200円の差ですが、20人の部署で計算すると月額で1,800円と4,000円、年額で21,600円と48,000円の差になります。
年払いのほうが月額は安く済むのでメリットは大きいのですが、利用人数の増減を考えるとなかなか年払いには踏み切りづらいものです。
しかし、Slackには「Fair Billing Policy(公正な請求ポリシー)」があり、14日以上アクセスがないユーザーは非アクティブユーザーと認識され、そのユーザーの分の料金はクレジットとして返却されるため、年払いのデメリットはさほど大きくありません。
最悪Slackを使わなくなっても1人分の料金が課せられるだけですので、年払いを避ける理由はほとんどないのが実情です。
無料のフリープランを利用していて一番問題になるのが、メッセージの検索可能範囲が直近の1万件に限られることです。メッセージ自体は1万件を超えてもしっかりとSlackに蓄積されるのですが、無料のフリープランを利用しているうちは1万件を超えた部分は検索対象に含まれなくなるのです。
1万件も検索できれば十分というのであれば無料のフリープランを利用しても良いのですが、5人の小規模チームでもそれぞれが1日20件の発言をすれば100日、3か月も保つのがやっとの件数です。これが20人なら1か月も保ちません。
それが有料版のスタンダードプランなら、1万件を超えた部分のメッセージも検索可能になります。大きなメリットです。その上、プラスプランに至ってはスタンダードプランでは書き出しできないメッセージも書き出しできて、ほかのアプリでの処理も可能となるメリットまであります。
また、無料のフリープランでは10個までに制限されている連携サービスや連携アプリが、無制限に連携できるというメリットもあります。
連携アプリや連携サービスはSlackを使う最大のメリットのひとつで、Dropboxなどのストレージサービスから直接ファイルをやり取りしたり、位置情報のFoursquareで営業担当者の居場所を報告したり、ネットから情報をTwitterやRSSでチャンネルに流したり、SkypeでSlackに参加していない人と会話したりチャットを持ってきたりできます。
逆に言うと、10個以下の連携アプリやサービスで済むような使い方で足りるのであれば、必ずしもSlackを利用する必要はないと見ていいでしょう。
有料版に移行するメリットとしては、ほかにファイルストレージの容量が大幅に増える点も挙げられます。
たとえばそれまで20人で無料のフリープランを利用していて、有料版のスタンダードプランに移行した場合、全体で5GBしか使えなかったものが一気に200GB使えるようになります。それまでは、ちょくちょく削除しておかなければならなかったファイルが、たっぷりと利用できるのは運用する側には非常に大きなメリットです。
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