若い世代に人気の動画投稿アプリ「TikTok」で使用している音楽は、著作権を侵害しているものではないか、という意見が出ています。TikTokで使われる音楽が本当に違法なのか、そして著作権の制限で動画が保存できなくなった事情について調べました。
TikTokは、音楽に合わせて動画を撮影し投稿して楽しめる動画アプリです。アプリで使える音楽は最近のJ-POPだけでなく、懐かしのJ-POPのアレンジバージョンや、洋楽、リミックスなど多種類の曲がそろっており、動画に合わせて踊ったりアクションする動画が人気です。
ここで気になるのは、TikTokで使える音楽の著作権はきちんと利用手続きが行われているものか、違法な音源ではないのか、という点です。違法アップロードなど権利元に無許可で音楽を利用する事件が増えてきており、気にしている方も多いでしょう。
TikTokはサービス内で音楽が使用できるよう、きちんと利用許可を得ています。どのような手続きが行われているのか、契約の仕組みや音楽の利用方法について詳しく解説していきます。
TikTokは、一般社団法人日本音楽著作権協会(通称:JASRAC)と音楽利用についての包括契約を結び、サービス内で自由に音楽を使える許諾を得ています。
JASRACとは、日本国内の音楽の権利者(作詞者・作曲者、音楽出版者など)から委託という形で音楽の権利を管理している団体です。管理している曲が使用された時の使用料を権利者に分配する業務も行っています。また、海外の権利関係会社と連携し、お互いの国の音楽を管理し合うことで、国内で海外の音楽を利用できるようにしています。
通常、JASRACで管理している音楽をインターネット上で使用する時は、JASRACにその曲の利用申請と利用料金の支払いをしなければなりません。しかし、この包括契約によって一連の利用手続きをTikTok側が一括で行うことにより、ユーザーは手続きをすることなく音楽を利用できる仕組みになっています。
ただし、JASRACは日本国内の全ての曲の著作権を管理しているわけではありません。JASRACで管理されていない曲をアップロードして使用すると、著作権侵害になります。使用したい曲がJASRAC管理の曲かどうか気になる方は、JASRACの作品データベースで検索してみるとよいでしょう。
TikTokに最初から内蔵されていて配信している曲は、JASRACで著作権を管理されていて、インターネット上での利用条件を満たしている曲です。ユーザーはTikTokで動画を撮影する時、この音楽は自由に使用できます。
また、TikTokは大手レコード会社であるユニバーサルミュージックやワーナーミュージック・グループ、そしてApple MusicやAWAといった音楽サブスクリプションサービス(定額音楽配信サービス)とパートナー・シップを結んでいます。
そのため、上記レコード会社からリリースしているアーティストの曲や、サービスで配信されている曲は安心して利用できる仕組みになっています。
TikTokで使用できる音楽には条件があり、CDや配信されている音源は使用できません。「原盤権」という権利が関係しているためです。
「原盤権」はそのCDや市販の配信音源を製作(録音)した人に発生する権利です。この権利は、原盤の製作者が原盤(CDや配信)の音源の使用についての可否を決める権利があります。原盤権はJASRACでは管理していないので包括契約の範囲に含まれていません。そのため、市販の音楽をアップロードするだけで著作権侵害になります。
例外として、先に述べたパートナー・シップを結んでいる会社の所属アーティストのオリジナル音源や、サブスクリプション配信されている曲のオリジナル音源は、原盤権を所有しているレコード会社などから許可を得ているので使用できます。TikTokが公式に配信している市販の音源はこのケースに当たります。
TikTok内で市販と同じ曲を使用したいと考えている人は、個人でのアップロードを控え、TikTokから正式に配信されている楽曲を利用するという方法が一番安全です。
TikTokにはオリジナル音源をアップロードできませんが、アレンジ(二次加工)された場合であればアップロードして利用できます。なので、カラオケなどでカバーして歌った曲を動画に組み合わせて利用するのはOKです。
上記のような自分でカバーして歌う場合と同様、自分で演奏した音楽をアップロードして使用するのもOKです。ただ、許可を得ずに編曲した場合は、下記のように著作権の侵害になりますのでご注意ください。
編曲・訳詞・替歌などについて
著作者・著作権者の許可なく編曲・訳詞・替歌など、作品を改変する行為は、著作者人格権(同一性保持権)および翻案権等の侵害となるおそれがありますのでご注意ください。
また、著作者の名誉・声望等を害するような方法で著作物を利用することも、著作者人格権の侵害行為とみなされますので、あわせてご注意ください。
TikTokには海外アーティストの楽曲も多く配信されています。リズミカルな曲も多いため、よく利用する人もいるのではないでしょうか。
パートナー・シップを結んでいるレコード会社が国際的に事業展開していることや、JASRACが海外の著作権管理団体とも連携していることから、日本国内の音楽と同様に海外の音楽もJASRACの包括契約の対象となって使用できる曲が多く存在します。そのため、TikTokでも国内の音楽と同様の点に気を付ければ利用できます。
しかし、海外の音楽を利用する時にも注意点があります。
JASRACが権利を管理している国内で利用できる曲もありますが、管理の対象になっていない曲やアーティストも存在します。JASRACで管理されていない曲は包括契約の対象外となっているので、カバーした音源であってもTikTokで利用することはできません。
海外の音楽も国内の音楽と同様、TikTokから配信されている楽曲を使うことが一番安心できる利用方法です。
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